AIは忖度し、厳しいことを言わない ― レビュワーの視点を取り入れる

著者: 宮﨑誠士
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はじめに

AIを使って資料や考えをまとめていると、あることに気づきます。 それは、 AIが厳しいことを言わない ということです。

なぜなら、AIは人間に優しくするようにできているからです。 これは RLHF(人間のフィードバックによる強化学習) という学習のしくみが関係しています。人間が好ましいと感じた回答を高く評価して学習させているため、AIは人間に寄り添い、肯定的に答える傾向を持つようになります。(RLHFについては 生成AI活用のコツは「期待値」の見極め で詳しく解説しています)

そのため、肯定的に物事を考えてしまい、否定的な視点を持たないまま、資料の完成や考えがまとまってしまう、という懸念があります。

AIに任せると「チェック漏れ」が増える

本来であれば、常に自分の考えを疑い、AIの作業内容を確認できればよいのですが、これがなかなか難しいのです。

自分自身で考えているため、 矛盾に気づけない ことがあります。 また、論理の飛躍などが散見されるようになります。

さらに、AIを使うことでアウトプットの量が一気に増えます。 その結果、チェックや考えるべきことも増え、どうしてもチェック漏れが発生してしまいます。

AIに『厳しい意見』を言わせるスキル

これを防ぐためには、 AIに厳しい意見を言わせるためのスキル が必要になってきます。

ここでいう「スキル」とは、 あらかじめ用意しておく「こう振る舞ってほしい」という指示書 のようなものです。「あなたは厳しいレビュワーです。私の考えの矛盾や論理の飛躍を遠慮なく指摘してください」といった役割を、毎回入力する手間なく呼び出せるようにしたもの、とイメージしてください。

私はAIで資料を作ったり、考えをまとめたりするとき、最後に レビュワーとして厳しい意見を言わせるスキル を使っています。

このことによって、AI側から次のような点を事前に洗い出すことができます。

  • 考えの 矛盾点
  • 論理の 飛躍
  • 未実証 の項目

肯定的なAIに、あえて「厳しいレビュワー」の役割を与えることで、見落としていた弱点が浮かび上がってきます。

私の実践例

私は普段 Claude を使っており、そのために レビュー専用のスキル をあらかじめ用意しています。 こうしたスキルづくりも、 AIに手伝ってもらえば難しくありません。専門知識がなくても、「こう振る舞ってほしい」という役割をAIと相談しながら形にしていけます。 使う場面によって、次の2通りに分けています。

1. 会話の流れをレビューするとき

AIとやり取りしながら考えをまとめていくと、会話が長くなるほど話が少しずつ脇道にそれたり、前提が曖昧になったりします。 そこで私は、 会話の最後にレビュースキルを使い、それまでのやり取り全体を振り返らせます。 こうすることで、議論の途中で生まれた矛盾や、いつの間にか飛躍していた論理を洗い出せます。

2. 出来上がったコンテンツをレビューするとき

資料やブログ記事など、形になったものをチェックする場合は、 新しい会話を立ち上げ、そこにファイルを添付してからレビュースキルを使います。 あえて何の文脈も持たない「まっさらなAI」に読ませることで、作り手の思い込みが入っていない、第三者に近い視点での指摘が得られます。

この2つを使い分けることで、「考えている途中」と「出来上がったあと」の両方で、別の視点からのチェックを挟めるようになりました。

なお、「同じAIに自分の出力をチェックさせて意味があるのか」と思われるかもしれません。 しかし、AIが自分の出力を批判し、書き直すという考え方は、開発元であるAnthropic社の学習手法(Constitutional AI)にも採り入れられているものです。実際に私自身、1つのAIで作成からレビューまで行って問題を感じたことはありません。 一方で、 別のAIに調べさせた内容を、Claudeでレビューさせる こともあります。たとえばGeminiで調査した資料をClaudeに読ませ、調査内容に論理の飛躍がないかを確かめる、といった使い方です。作り手とは別のAIにチェックさせることで、より客観的なチェックになります。

実際に返ってきた指摘の例

言葉だけでは伝わりにくいので、実例を一つご紹介します。 あるサービスの説明資料をレビューさせたとき、次のような指摘が返ってきました。

最も強い反論

「お客様の悩みをまとめて解決します」という中心メッセージが、製品の現状と噛み合っていない。

この資料の軸は、冒頭で挙げた複数の悩みを「まとめて解決する」という約束です。しかし、その解決手段の中核となる機能は、資料の中で「近日公開予定」と明記されています。つまり、その悩みを解決する導線は今はまだ使えません。さらに、もう一つの解決手段は上位プランでしか提供されていません。

結果として、入口となる安いプランでは、筆頭に挙げた悩みの解決手段がほぼ提供されない。「まとめて解決」という約束は、少なくとも安いプランでは成立していません。

資料を作った本人は「悩みをまとめて解決する」という流れに気持ちよく乗っていて、 入口プランでは肝心の機能が使えない という矛盾に気づけていませんでした。 通常のプロンプトで資料を作っていると「分かりやすい資料です」といった肯定的な意見で終わってしまいます。 あえて厳しい役割を与えてチェックすることで、 資料の矛盾点を発見できた のです。

なお、ここでは資料作成を例に挙げましたが、AIとの会話そのものをレビューさせる使い方もできます。

レビューを挟むことの価値

レビューを挟むことで、自分の考えを 別の視点から見る ことは非常に大切です。

これをすることで、資料の矛盾点や論理の飛躍といったものがなくなっていきます。

そしてもう一つ、大きな効果があります。 AIが推測して補ってくれていた部分は、自分自身が考えていない点 だということです。

レビューによってそこが明らかになると、「なぜそうしているのか」「そうなっている理由は何か」を改めて考え直すきっかけになります。 結果として、 自分自身でしっかり考えられるようになる のです。

まとめ

  • AIは人間に優しく作られているため、厳しい指摘をしてくれない
  • 肯定的なまま進むと、矛盾や論理の飛躍に気づけない
  • アウトプットが増えることで、チェック漏れも起きやすくなる
  • AIに「厳しいレビュワー」の役割を与えるスキルで、矛盾・飛躍・未実証を洗い出せる
  • レビューを通して、自分が考えていなかった点に気づき、改めて考え直せる

AIをただ便利に使うだけでなく、 あえて厳しい視点を取り入れる こと。 それが、AI時代に質の高いアウトプットを生み出すための一つの鍵になります。


本記事では考え方と私自身の使い方をご紹介しました。 これを御社の業務にどう組み込めばよいか、より踏み込んだ個別の事例を知りたい という方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。御社の状況に合わせた活用方法をご相談いただけます。

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